「もっと社交的になりたい」——飲み会の帰り道、ひとり反省会をしながらそう思ったことが、私は何度もある。今日もうまく輪に入れなかった、あの人みたいに軽やかに話せたら、と。そして次の瞬間には「でも性格なんて生まれつきだし」と、その願いを自分でたたんでしまう。

この「変わりたいけど、どうせ無理」の往復が、いちばん消耗する。だから研究が実際どう言っているのかを、一度ちゃんと知っておきたかった。先に結論を言うと、性格はある程度安定している一方で、生涯を通じて緩やかに変化し、意図的な働きかけによっても変わりうる——研究はそう示している。ここからは「変わる部分」と「変わりにくい部分」を、出典付きで冷静に見ていく。

「性格」を研究はどう捉えているか

性格を科学的に扱うとき、広く使われるのがビッグファイブ(性格特性5因子モデル)という枠組みだ。性格を「外向性」「神経症傾向(情緒の安定しにくさ)」「誠実性」「協調性」「開放性」の5つの次元で捉える考え方で、人を「◯◯タイプ」と型に分ける類型論とは違い、各次元のどのあたりに位置するかという連続的な「程度」で性格を記述する(Goldberg, 1990)。

ここが地味に、でも決定的に大事だと思う。性格は「明るい/暗い」のように白黒で分かれるものではなく、なだらかなグラデーションの上にある。だから「性格を変える」とは、たいていの場合「まったく別人になる」ことではなく、その程度が少し動くことを指す。内向的か外向的かという軸も、この連続した程度のひとつだ(内向型と外向型の違いを整理した記事もあわせてどうぞ)。

性格は「安定」しつつ、生涯かけて変わっていく

「性格は変わらない」というイメージには、一面の真実がある。性格特性には時間を超えた安定性があって、数年程度では大きく変わりにくいことが知られている。でも同時に、長い年月で見れば、性格は一定の方向に変化していくことも研究は示している。

Robertsら(2006)は、92の縦断的なサンプル(同じ人を追跡した研究)を集約したメタ分析を行った。その結果、多くの人が若い成人期(およそ20〜40歳)にかけて、誠実性・情緒の安定性・社会的な自信(外向性の一側面)を平均的に高めていくことが報告されている(Roberts, Walton & Viechtbauer, 2006)。年齢を重ねるなかで、責任感や落ち着きが少しずつ増していく——研究者はこの傾向を、成熟に向かう変化として整理している。

この事実は、「性格は固定されていて変えようがない」という思い込みを、そっとやわらげてくれる。何もしなくても人は少しずつ変わっていくのだから、「変わりたい」という願いそのものは、決して的外れではない。

意図的な働きかけでも、性格は変わりうる

年齢とともに自然に変わるだけでなく、「変えよう」とする働きかけによっても性格は動くのか。この問いに正面から取り組んだのが、Robertsら(2017)による介入研究のメタ分析だ。

彼らは207件の研究をまとめ、心理療法などの介入によって性格特性の測定値が変化し、その変化は平均して介入後も持続したことを報告した。とりわけ変化が見られやすかったのは情緒の安定性(神経症傾向の低下)で、次いで外向性だった(Roberts, Luo, Briley, Chow, Su & Hill, 2017)。変化の大きさは小〜中程度で、平均およそ半年ほど(24週)の介入期間で観察されている。

ただ、ここは慎重に読みたい。これらの多くは治療などの文脈で測定されたもので、「誰でも思い通りに自分の性格を設計できる」ことを意味するわけではない。性格特性の測定値が動くことと、日常の実感がガラリと変わることも、たぶん同じではない。それでも、この結果が「性格は変えられない」という決めつけへの有力な反証になっているのは確かだと思う。自分を変えたいという気持ちの底に自己評価の悩みがあるなら、内向的な気質と自己肯定感の高め方も参考になる。

「変わりにくい部分」もある——だから自分を責めなくていい

一方で、性格には変わりにくい側面もある。生まれ持った気質の要素や、感じやすさ(感受性)のような基盤的な特性は、環境の整え方で「出方」は変えられても、根っこから消し去るのは簡単ではない。感受性については感受性が強いとは何かを研究から整理した記事にまとめている。

ここで大事なのは、「変わりにくい部分」を無理に否定しないことだ。性格特性は人生のさまざまな結果と関連することが知られているが(Roberts et al., 2007)、それは「良い性格・悪い性格」という人としての優劣の話ではなく、あくまで傾向と環境との相性の問題だと私は思っている。くよくよしやすい、人見知りする——そうした自分の特徴も、裏返せば慎重さや誠実さという持ち味につながる。

だから私は、「変えたい自分」と「変えなくていい自分」を分けて考えるようにしている。行動や習慣、環境との付き合い方は工夫で変えられる。でも気質の土台まで無理に作り変えようとすると、かえって自分を責める材料が増えるだけだ。

「変わりたい」と上手につきあうヒント

研究の示唆をふまえると、性格を変えたいときの現実的なアプローチが見えてくる。

  • 「別人になる」ではなく「程度を動かす」と考える:性格は連続的な程度。少しの変化でも十分意味がある
  • 行動から入る:性格そのものを念じて変えるより、「人に一言あいさつする」など小さな行動を積み重ねるほうが取り組みやすい
  • 時間を味方につける:人は年齢とともに落ち着き・誠実さが増す傾向がある(Roberts 2006)。焦らなくていい
  • 必要なら専門的な支援を使う:介入で情緒の安定性などが変わりうる(Roberts 2017)。つらさが強いときは一人で抱えない

つらさが続くときは、抱え込まないで

「性格を変えたい」という気持ちの背景に、強い自己否定や生きづらさがあるなら、性格の問題として一人で抱え込まないでほしい。自分を責める気持ちが続く、気分の落ち込みが抜けない、日常生活に支障が出ている——そうした状態が続くときは、心療内科・精神科やカウンセリングなど専門家に相談する選択肢がある。

Robertsら(2017)のメタ分析が示すように、専門的な支援は性格特性の面にも変化をもたらしうることが報告されている。「性格だから仕方ない」と我慢し続ける前に、相談先を持っておくと安心だ。厚生労働省のこころの耳では、働く人向けの相談窓口の情報も見られる。

よくある質問(FAQ)

性格は本当に変えられるのですか?

「まったく別人になる」のは難しいですが、程度の変化なら十分あり得ます。研究では、人は年齢とともに緩やかに変化し(Roberts 2006)、心理療法などの介入でも性格特性が変わりうる(Roberts 2017)ことが報告されています。

何歳からでも変われますか?

変化は若い成人期に大きい傾向がありますが、その後もゆっくり続くとされます。「もう歳だから」と諦める必要はありません。ただし変化は緩やかなので、短期間で劇的に変わることを期待しすぎないほうが現実的です。

内向的な性格は外向的に変えたほうがいいですか?

その必要はありません。内向性・外向性は連続的な程度の違いで、優劣はありません。無理に外向的にふるまい続けると消耗することもあります。変えたいのが「行動」なのか「気質そのもの」なのかを分けて考えると、無理がありません。

自分で性格を変えるには何から始めればいいですか?

性格そのものを念じるより、小さな行動を変えるほうが取り組みやすいとされます。「あいさつを一言足す」など具体的な行動を積み重ねるのが現実的です。つらさが強い場合は、専門家の支援を使うことも選択肢です。

まとめ

性格は「生まれつきで一生変わらないもの」ではない。研究は、性格が生涯かけて緩やかに変化し(Roberts 2006)、意図的な介入によっても変わりうる(Roberts 2017)ことを示している。同時に、性格は連続的な「程度」であって、変えるとは別人になることではなく、その位置が少し動くことだ。

飲み会の帰り道でひとり反省会をしていたあの頃の私に、いま何か言えるとすれば、こうだ。「変えたい自分」は行動や環境の工夫で少しずつ動かせる。でも「変えなくていい自分」まで無理に否定しなくていい。その両方を分けて受けとめることが、研究にも沿っていて、しかもいちばん自分を責めずにすむ向き合い方だと思う。