扁桃体は、脳の側頭葉の内側にあるアーモンド形をした神経核の集まりで、目や耳から入った情報に感情的・生物学的な「意味」を素早く付け加える部位です。とくに脅威や新奇な刺激を検出し、心拍の上昇やすくみといった防御反応を起こす回路の中心として知られています。内向型やHSPの話題で「恐怖中枢」と紹介されることが多い部位でもあります。
研究でわかっていること
扁桃体は、危険を意識する前に無意識的に脅威を検出し、防御反応を立ち上げる働きをすると考えられています。一方で「恐怖」という主観的な感じそのものは、扁桃体だけでなく大脳皮質を含む別の処理から生まれる、という二系統の枠組みを提案する研究者もいます(LeDoux & Pine、2016)。
気質研究との関連も報告されています。Kaganらは、乳幼児期に新奇な刺激へ強く反応する「行動抑制」傾向を、扁桃体が新奇さに敏感に反応しやすいことと結びつけて論じてきました(Pérez-Edgar & Guyer、2014)。抑制的な気質の人ほど、新しい顔などに対し扁桃体の活動が高まりやすく、慣れ(馴化)が起きにくい傾向が、13件のfMRI研究をまとめたレビュー・メタ分析でも報告されています(Clauss ら、2015)。
わかっていないこと・よくある誤解
「扁桃体=恐怖中枢」という表現は単純化しすぎだと指摘されています。扁桃体は恐怖だけでなく、食・報酬・注意など幅広い刺激の重要性を処理する回路の一部であり、恐怖の感情がここ一箇所で作られるわけではないと考えられています。
また、これらは主に集団での相関や平均的な傾向であり、「扁桃体の反応が強いから必ず不安障害になる」といった個人の運命を決めるものではありません。気質は環境や経験とも影響し合うため、脳画像の差だけで自分をラベリングしすぎないほうが実態に近いと言えそうです。