感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity: SPS)は、外部や内部の刺激をより深く処理し、環境の影響を受け取りやすい気質的な傾向を指す、心理学の構成概念です。1997年にElaine AronとArthur Aronが提唱したもので、一般に知られる「HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉の学術的な基盤にあたります。
研究でわかっていること
Aron夫妻は1997年の論文で、7つの調査をもとに感覚処理感受性という一次元の特性を提案し、それが内向性や情動性とは部分的に独立した概念であると報告しました。あわせて、この特性を測る27項目のHSPスケールも開発されています。
その後、Michael Pluessらの研究グループはSPSを、より広い「環境感受性(Environmental Sensitivity)」という枠組みの中に位置づけました。2019年のGrevenらによるレビュー論文では、感受性の高さはネガティブな環境からストレスを受けやすい一方で、ポジティブで支援的な環境からはより大きな恩恵を受けやすい、という双方向の性質が指摘されています。「弱さ」ではなく「環境への反応のしやすさ」として捉える見方です。
また、Lionettiら(2018年)の研究では、感受性は連続的でほぼ正規分布する特性であることが示され、統計的な区切りとして低・中・高の3グループ(およそ29%・40%・31%)が報告されています。「HSPか、そうでないか」という二分法は、こうした研究知見とは整合しません。
わかっていないこと・よくある誤解
「人口の5人に1人がHSP」という数字が広く流通していますが、感受性は連続的な特性であり、割合はどこで区切るかによって変わります。固定された比率が証明されているわけではありません。
また、SPSは医学的な診断名ではなく、DSMなどの診断基準にも収載されていません。「HSP診断」をうたうサービスや、感覚処理障害(SPD)との混同には注意が必要です。脳画像研究なども進められていますが、サンプル数が小さい研究が多く、再現性の検証はまだ途上です。測定が自己報告式の尺度に依存している点も、研究上の限界として指摘されています。