マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に、評価や判断を加えずに意図的に注意を向ける」心のあり方、およびそれを養うための瞑想などの実践を指す言葉です。1970年代末に医療プログラム(マインドフルネスストレス低減法:MBSR)として体系化されて以降、うつ病の再発予防を目的としたマインドフルネス認知療法(MBCT)など、心理療法や職場研修にまで応用が広がっています。
研究でわかっていること
47件のランダム化比較試験を統合したメタ分析(Goyal et al., 2014, JAMA Internal Medicine)では、マインドフルネス瞑想プログラムが不安・抑うつ・痛みを小〜中程度改善するという「中程度のエビデンス」が報告されています(効果量はおおむね0.2〜0.4)。一方、注意力・睡眠・体重などへの効果は「不十分」と判定されました。
さらに、44件のメタ分析(336試験・約3万人)をまとめたレビュー(Goldberg et al., 2022)では、何もしない対照群と比べると多くの領域で改善が示されるものの、他の確立された治療(アクティブ対照)と比べると差は小さくなる傾向が確認されています。つまり「一定の効果はあるが、既存の治療より優れるとまでは言えない」というのが現在のエビデンスの位置づけです。
わかっていないこと・よくある誤解
ネットや書籍では「脳が変わる」「あらゆる不調に効く」といった万能薬的な紹介が目立ちますが、研究者自身がこうした誇大な宣伝に警鐘を鳴らしています(Van Dam et al., 2018)。マインドフルネスの定義や測定方法が研究ごとにばらつくこと、有害事象(瞑想中に不安や不快感が強まるケース)の報告が不十分なことなど、方法論上の課題が残されています。
また、薬物療法や運動と比べて優れているという証拠は示されておらず、治療の代替として自己判断で用いることには注意が必要です。「誰に・どのくらいの実践量で・どんな効果が出るのか」という個人差の解明も途上であり、合う・合わないがあって当然の実践のひとつ、と捉えるのが現時点では妥当と考えられます。