刺激追求傾向(sensation seeking)とは、新奇で複雑・強烈な感覚や経験を求め、そのために身体的・社会的・金銭的なリスクをとることをいとわない傾向を指すパーソナリティ特性です。心理学者マーヴィン・ザッカーマンが提唱し、専用の質問紙(Sensation Seeking Scale)で測定されてきました。

研究でわかっていること

ザッカーマンは著書『Behavioral Expressions and Biosocial Bases of Sensation Seeking』(1994)で、この特性を「スリル・冒険の追求」「経験追求」「脱抑制」「退屈しやすさ」といった下位側面から整理し、その生物学的な基盤を論じました。

刺激追求には性差があると報告されています。ザッカーマンのSSS-Vを用いた72件の研究(1978〜2012年)のメタ分析では、合計得点で男性が女性より高く(d≈0.46)、この差は35年間おおむね安定していた一方、「スリル・冒険の追求」だけは近年縮小していたとされます(Cross et al., 2013)。生物学的素因と社会規範の相互作用がうかがえる、という慎重な解釈がなされています。

わかっていないこと・よくある誤解

ネット上では「刺激を求めるHSP(HSS型HSP)」という組み合わせがよく語られますが、これは学術的に確立した診断カテゴリーではありません。感覚処理感受性(SPS/HSP)を測る標準的な尺度と、既存の刺激追求尺度とは中程度の負の相関(r = −0.39)を示したという報告があり、重なりはあるものの別々の特性だと考えられています(Acevedo et al., 2023)。同研究では、高感受性の人にも刺激追求の高い人・低い人がいる可能性が示唆されていますが、これは214名を対象とした単一研究であり、断定はできません。

また、測定尺度そのものにも「項目が時代に合わない」といった見直しの議論があり、刺激追求の操作的定義は研究によってばらつきがある点にも注意が必要です。