無料の愛着スタイル診断を、たぶん一度はやったことがあると思う。私はある。二十問くらい答えて、「あなたは不安型です」と表示されて、しばらく黙った。当たっている気がした。そのあと、少しだけ嫌な気持ちになった。当たっているからこそ、そこに固定された感じがしたからだ。
あの四つの箱——安定型・不安型・回避型・恐れ型——は、どこから来たのだろう。そして、研究はそれをどれくらい支持しているのだろう。
四つの箱の来歴
イリノイ大学の Fraley による成人愛着理論の解説によると、出発点は1987年の Hazan と Shaver だ。二人は、乳児と養育者の関係と、大人の恋愛関係が似た働き方をしていることに着目した。どちらも、相手がそばにいると安心し、いないと不安になり、相手を安全基地として世界を探索する。
そこで二人は、三つの短い段落を用意して「自分にいちばん近いものを選んでください」という簡単な質問紙を作った。結果、大人の分布は乳児期で観察されていた分布と似ていた。およそ60%が安定型、約20%ずつが回避型と不安-抵抗型を選んだ、と報告されている。
その後1990年に、Bartholomew が Bowlby の議論に依拠して、人は「自分についての表象」と「他者についての表象」を別々に持っていると論じた。そして、その二つを肯定/否定で組み合わせれば、三つではなく四つのパターンが導ける——安定・とらわれ・軽視・恐れ、という四つだ。診断テストで見かける四分類は、おおむねこの系譜にある(この整理は Fraley らの2015年論文の導入部による)。
つまり四つの箱は、理論からきちんと導かれたものではある。ただし「理論の上できれいに描ける区分」と「実際のデータにその境目があるかどうか」は、別の問題だ。問題はここからになる。

型なのか、程度なのか
Fraley の解説によれば、Brennan らの研究から、成人の愛着には二つの基本的な次元があることが示された。ひとつは愛着不安(相手が応じてくれるかどうかへの懸念の強さ)、もうひとつは愛着回避(他者に頼ったり心を開いたりすることへの抵抗の強さ)。安定型と呼ばれる人は、この二つの両方が低い位置にいる人、という言い方になる。
では、その二つの次元の上に、境目のある「型」は実在するのか。
自己申告で測った4,699人分
Fraley、Hudson、Heffernan、Segal は2015年に、Journal of Personality and Social Psychology でこの問いにタクソメトリック分析という手法で答えている(109巻2号354–368頁)。使ったのは二つのサンプルだ。ひとつ目は探索的な分析用の2,399人分、ふたつ目はサンプリング計画と分析手順を事前登録したうえで集めた2,300人分。仮説に合う結果が出るまで分析を試す余地を、あらかじめ狭めてある。
結果は、全般的な愛着表象についても、母親・父親・恋人といった関係ごとの愛着についても、カテゴリ的なモデルより次元的なモデルのほうがデータに合致するというものだった(親友との愛着だけは、一部の手法で判定が曖昧だった。ただしそれも「カテゴリ的」を支持する結果ではない)。人は「不安型」と「安定型」の二群に分かれているのではなく、不安と回避の目盛りの上に、切れ目なく散らばっている。
ただし、この研究には限界もある。データは Fraley の研究サイトを訪れた人が自発的に回答したウェブサンプルで、無作為抽出ではない。著者ら自身がこの方法の是非に触れ、ウェブサンプルは年齢・民族・国籍・関係状況・収入の点でむしろ多様であることを先行研究に基づいて述べている。加えて著者らは、この研究が自己申告に限られていること、そしてカテゴリ的モデルと連続的モデルのどちらが実際の予測に役立つかまでは検証していないことを、自ら限界として挙げている。単一の研究で決着した話ではない。
面接で測っても、同じだった
自己申告の質問紙だから連続的に見えるだけではないか、という疑いは当然出てくる。ここに答えたのが、Raby たちが2022年に Development and Psychopathology で報告した分析だ。ただし、測っているものは少しずれる。次に見る成人愛着面接が扱うのは恋愛関係ではなく、養育者との経験を今どう語るかという心的状態のほうだ。別の対象を別の方法で測った結果が同じ方向を向いた、という読み方になる。
対象は成人愛着面接(AAI)。訓練を受けた評定者が、養育者との経験について語る内容を聞き取って符号化する手法で、標準的な符号化システムは人を自律型・軽視型・とらわれ型・未解決型のいずれかに分類することを勧めている。研究チームは40の研究から個人レベルのデータを集め、計3,218人分を統合した。
確認的因子分析では、軽視ととらわれの弱く相関する2因子モデルも、未解決をとらわれから分けた3因子モデルも、データと両立しうると示された。そしてタクソメトリック分析では、軽視・とらわれ・未解決のいずれについても、カテゴリ的なモデルより連続的なモデルのほうが整合的だった。
自己申告でも面接でも、同じ方向を向いている。私が診断結果に固定された感じを覚えたのは、たぶん測定の都合を、自分の性質だと受け取ったからだ。
世代を越えて伝わるものは、どこまで測れているか
愛着の話になると、たいてい育てられ方の話になる。ここも数字が出ているのだが、測られているものを先に確認しておきたい。
Verhage たちは2016年、Psychological Bulletin で、養育者の愛着表象と子どもと養育者のあいだの愛着の世代間伝達について、95サンプル・計4,819人分を統合したメタ分析を発表した。独立変数は「育て方」そのものではなく親の側の愛着表象で、従属変数は幼い時期の愛着だ。大人になってからの恋愛の愛着スタイルではない。
結果、伝達そのものは確認された。安定-自律の伝達は r = .31、未解決の伝達は r = .21。
注目すべきは、この値が20年前のメタ分析(それぞれ r = .47、r = .31)より有意に小さかったことだ。さらに、未公刊の研究や新しい研究のほうが効果量が小さいという傾向も見つかっている。効果量はサンプルのリスク状況、子どもと養育者が生物学的につながっているか、子どもの年齢によっても変わった。
そして、いわゆる「伝達のギャップ」——親の愛着表象が子の愛着に伝わる経路を、養育者の敏感さ(sensitivity)だけでは説明しきれないという20年来の謎——は、近年の研究で狭まったものの、埋まってはいないと報告されている。
r = .31 という値は、決定でも無関係でもない。ここから先は私の読み方だが、「親の関わりが子の愛着を決める」という言い方は、この数字より強すぎると思う。同時に「関係ない」も言い過ぎだ。伝わってはいるが、何がどう伝わっているのかの説明が、まだ研究の側でも足りていない。しかもこれは幼い時期の愛着の話で、いま自分が恋人に対してとっている距離の話まで、そのまま延ばせるわけでもない。
変わるのか、変わらないのか
安定性についても、Fraley の解説に整理がある。
親との関係における愛着の安定性は、おおむね r = .25 から .39 程度とされる。また、親的な人物への愛着スタイルと、現在の恋人への愛着スタイルの相関は、およそ .20 から .50(小さいものから中程度)だった。相手が変われば、同じ人でも位置がずれる。
面白いのはここから先だ。Fraley は、愛着理論の同じ前提から出発しても、長期的な安定性について正反対の予測をする二つのモデルを導けることを示している。ひとつは、新しい経験によって古い表象が上書きされていくモデルで、これは長期的な安定性がゼロに近づくと予測する。もうひとつは、人生の最初の時期に作られた表象が上書きされずに保たれ続けるモデルで、こちらは安定性がゼロでない値に落ち着くと予測する。
だから解説はこう結んでいる。長期的な安定性が存在するかどうかは、理論の前提ではなく実証的な問いとして扱うべきだ、と。
「三つ子の魂百まで」も「人は変われる」も、理論からは両方導ける。どちらを信じるかは、データが決めることになっている。
それで、診断結果はどう扱えばいいのか
ここまでを踏まえると、四つの箱をどう持てばいいのかが少し変わってくる。
タイプ名は、二つの目盛りの上のだいたいの位置に付けられた呼び名であって、あなたが属する集団ではない。しかも位置は、相手によっても時期によってもずれる。「不安型だから恋愛がうまくいかない」という文は、研究が支えている範囲を超えている。
私はいま、自分の診断結果を「傾向のメモ」くらいに置いている。当たっていた実感は否定しなくていい。ただ、当たっているのは位置であって、輪郭ではない。
人との距離のとり方には、愛着以外の個人差も重なる。刺激や対人接触の量に対する耐性については内向性・外向性の枠組みが、人前での不安が強い場合については社交不安の整理が、それぞれ別の角度から関わってくる。
打ち明けることで距離が縮まるかどうかを研究から見た整理は自己開示の記事に、相手の感情に巻き込まれやすさについては共感力の記事に、言いたいことを伝える技術の実証状況はアサーションの記事にある。
なお、人との関係で強い苦痛が続いている、過去の経験が繰り返しよみがえる、日常生活に支障が出ているといった場合は、タイプ分けの話として抱え込まず、医療機関や公的な相談窓口(こころの耳など)に相談してください。 ここで扱った研究はいずれも集団の傾向を示すもので、個別の状態を判断できるものではありません。
よくある質問(FAQ)
愛着スタイル診断の結果は当てにならないということですか?
そうは言えません。不安と回避という二つの次元は、繰り返し測定されてきた個人差です。問題になるのは、その連続的な位置を四つの箱に切り分けて名前を付ける部分のほうです。Fraley らが2015年に2つのサンプル(探索用の2,399人と、事前登録したうえで集めた確認用の2,300人)で行ったタクソメトリック分析でも、Raby らが40研究・3,218人分のデータで行った面接法の分析でも、カテゴリ的なモデルより連続的なモデルのほうがデータに合っていました。目盛りの読み取りとしては意味があり、所属集団の判定としては根拠が弱い、という整理になります。
不安型・回避型は治せますか?
「治す」という言葉が想定している、病気とその治癒という枠組み自体が、この研究群の扱っているものとずれています。愛着に関する個人差は連続的な位置として測られており、境目のある型ではありません。安定性についても、Fraley の解説では、親との関係における愛着の時間的な安定性がおよそ r = .25 から .39 と紹介されています。また、これは安定性とは別の話ですが、親的な人物への愛着と恋人への愛着の相関はおよそ .20 から .50 で、相手が変われば位置もずれます。固定されているとも、自由に動くとも言えない範囲です。関係のなかで苦痛が続いている場合は、タイプの問題としてではなく、専門家に相談する範囲の話になります。
愛着スタイルは親の育て方で決まるのですか?
決まる、とは言えません。前提として、よく引かれるこのデータが測っているのは「育て方」そのものではありません。Verhage らが95サンプル・4,819人分を統合したメタ分析が調べたのは、養育者の愛着表象と、子どもと養育者のあいだの愛着との関連です(大人になってからの恋愛の愛着スタイルではなく、幼い時期の愛着です)。関連は確認されましたが、安定-自律の伝達で r = .31、未解決の伝達で r = .21 でした。しかもこの値は20年前のメタ分析(r = .47、r = .31)より有意に小さく、養育者の敏感さだけでは伝達を説明しきれない「伝達のギャップ」も、狭まったものの埋まってはいないと報告されています。関連はあるが、決定ではありません。
相手によって自分のタイプが変わる気がします
その感覚は研究の報告と矛盾しません。Fraley らの2015年の分析は、全般的な愛着表象だけでなく、母親・父親・友人・恋人といった関係ごとの愛着についても次元的な構造を見いだしています。また Fraley の解説では、親的な人物への愛着スタイルと現在の恋人への愛着スタイルの相関がおよそ .20 から .50 と紹介されています。重なりはあるが同一ではない、という程度の関係です。
面接で測れば正確に4タイプに分かれますか?
分かれませんでした。成人愛着面接(AAI)は訓練を受けた評定者が語りを符号化する手法で、標準的な符号化システムは自律型・軽視型・とらわれ型・未解決型への分類を勧めています。しかし Raby らが40研究・3,218人分の個人データを統合したタクソメトリック分析では、軽視・とらわれ・未解決のいずれについても、カテゴリ的なモデルより連続的なモデルのほうが整合的でした。著者らは、それぞれのモデルの予測妥当性をさらに検証する必要があるとも述べています。
まとめ
診断結果に黙り込んだあの夜、私は自分の輪郭を言い当てられたと思っていた。研究を読んだいまは、言い当てられていたのは輪郭ではなく、目盛りの上のだいたいの位置だったのだと考えている。
位置なら、動く。動かないかもしれない。そこは理論からは決まらず、まだ調べている途中だ。
四つの箱の話が広まったのは、たぶん、そのほうが分かりやすいからだ。分かりやすさは悪ではない。ただ、箱に入った気がしたときに、「これは切れ目のない目盛りだった」と思い出せるかどうかで、その後の自分への当たり方が変わる。少なくとも私は、少し楽になった。