「転職 何回まで」と検索するとき、知りたいのは平均回数よりも、「次で採ってもらえなくなるのか」なのだと思う。応募ボタンの手前で、これまでの職歴が急に重くなる。
今回確認した研究と公的調査から、誰にでも当てはまる上限回数は決められない。一方で、回数はまったく見られない、と言い切るのも違う。採用側が職歴から何を読み取るのかを分けてみると、準備できることが見えてくる。
勤務先が1社か4社かで、反応は変わった
同じ8年の経験を持つ、架空の応募者
Cohn、Maréchal、Schneider、Weberの研究は、職歴の受け取られ方を実験で調べている。2019年の公開稿に記載されたスイスの実験では、事務系の840求人に計1,680件の応募を送った。応募者は26歳、職務経験は8年という設定で、1社に勤めた履歴と、同種の仕事で4社を移った履歴を比較した。
2012年の実験では、面接への招待や候補入りの連絡があった割合は1社の履歴で23.2%、4社で16.8%。4社の履歴から仕事の空白期間を除いた2013年の実験でも、18.2%と12.2%だった。いずれも最終的な内定率ではない。研究の公開稿で、対象と測り方を確認できる。
「4社」と「転職4回」は違う
4社で働いた履歴は、この設定では会社間の移動が3回ということになる。しかも、比べたのは1社と4社の二つの条件だ。2社、3社と順に比べたわけではなく、「3回目から不利になる」という境目は測っていない。
研究が扱ったのは、若い応募者の同種の仕事への移動である。昇進を伴う移動や、日本のさまざまな年代・職種へ、そのまま数字を移すことはできない。ここで分かったのは、特定の条件では職歴の違いが採用側の反応を変えた、ということだ。

回数は、その人の性格を判定する検査ではない
採用側の推測と、本人の実像を分ける
同じ論文の人事担当者を対象にした調査実験では、4社の履歴は1社の履歴より、協力的・信頼できるといった仕事への態度が低く評価された。職歴から、まだ会っていない人の働き方が推測されていたのである。
ただし、架空の履歴に対する評価が下がったことと、現実の転職経験者が信頼できないことは別だ。会社の事情、契約の終了、生活上の事情も、紙の上では同じ「退職」の一行になる。読者一人の態度を、この実験から判定することはできない。
内向性や誠実性へ結びつけすぎない
私は、職歴を数えた瞬間に、その人の説明まで読み終えた気になることのほうが気になる。回数は見やすい。でも、各職場で何を担当し、何を残したかは、数えるだけでは見えてこない。
内向性・外向性やビッグファイブのような性格研究の言葉と、履歴書の社数は分けておきたい。今回の採用実験から「内向的だから転職が多い」「転職が多いから誠実性が低い」と読者を分類することはできない。
日本の調査では、採用する目的も異なっている
経験を求める採用、欠員を埋める採用
厚生労働省の令和2年転職者実態調査は、転職者を採用した理由を職種ごとに尋ねている。「管理的な仕事」「専門的・技術的な仕事」では、経験を活かした即戦力への期待が最も多かった。一方、「事務的な仕事」「サービスの仕事」などでは、離職者の補充が最も多かった。
これは2020年の調査(2021年公表)であり、2026年の採用市場を測った数字ではない。また、採用した理由の複数回答であって、回数ごとの合否を比べたデータでもない。「経験があれば回数は無視される」とまでは言えない。
自分の経歴と、求人側の課題を照らす
ここからは応募の準備への提案になる。募集要項を読むとき、「自分は何回辞めたか」に加えて、「この会社は何を任せる人を探しているか」を横に置いてみたい。
経験者を求める求人なら、担当した仕事と任せられる範囲を具体的にする。未経験の仕事なら、既にできることと、教わる必要のあることを分ける。どちらも採用を保証する方法ではないが、回数だけでは伝わらない情報を整理できる。
履歴を減らすより、説明の材料を整える
一つの職場につき、三つのメモ
準備の形として、各職場について「担当した仕事」「離れた事情」「次に必要な条件」を短く書き出してみる。きれいな成長物語にそろえる必要はない。契約終了なら契約終了、勤務時間が合わなかったなら、その条件を事実として書く。
例えば、これは架空の整理例だが、「販売職から事務職へ移った」だけでなく、「販売時代に在庫の集計を担当し、その作業を続けられる仕事を探した」とすると、移動のつながりが見える。実際に担当していない仕事や成果は足さず、在籍期間も正確に残す。
回数の説明に追われて、できる仕事の説明が消えてしまう。それは惜しいと私は思う。面接の想定問答を作る前に、まず職歴ごとの具体的な仕事を拾っておきたい。
次の環境を確かめる質問も用意する
「長く働きます」と約束する言葉だけでなく、業務範囲、入社後の教育、繁忙期の働き方を確認する質問を準備する。続けられる条件の整理は、仕事が続かないと感じるときの研究でも扱っている。
応募前の不安が大きいなら、転職の不安を整理した記事へ。書類や求人の見方を相談したい場合は、転職サイト・エージェントの比較ガイドも入口になる。相談先には、自分に近い職種・年代でどんな支援経験があるかを聞いてみたい。
眠れない、食事が取れないなど生活への支障が続くときは、回数への心配だけで抱えず、医療機関や産業医へ相談してほしい。応募書類を整える作業と、今の体調を支える相談は、分けて進めてよい。
よくある質問(FAQ)
転職は3回までなら大丈夫ですか?
今回の研究から、その線引きはできません。1社と4社の履歴を比較した実験であり、回数ごとの境目や、日本での一律の合格基準を調べたものではありません。
転職回数が多いと、必ず書類で落ちますか?
必ずではありません。スイスの実験では4社の履歴でも面接への連絡がありました。ただし、その割合は個人の通過確率や現在の日本市場の予測には使えません。
職歴を少なく見せたほうがいいですか?
勤務先や期間を偽ることは勧めません。正確な履歴に、担当業務と応募先で活かせる経験を添える準備ができます。提出形式は応募先の指定に合わせてください。
同じ会社に長くいれば、必ず有利になりますか?
この研究は、長く残る選択と今辞める選択の将来を比較していません。仕事内容、健康、生活の事情も含めて検討する必要があり、回数を増やさないことだけを判断基準にはできません。