履歴書の職歴欄が、少しずつ窮屈になってくる。行が増えるたびに、書いている自分のほうが言い訳を考え始める。あの会社は業績が、あの部署は上司が、あそこは通勤が——並べたあとで、結局ぜんぶ自分のせいな気がしてくる。

「仕事が続かない」で検索すると、たいてい原因の一覧表が出てくる。飽きっぽい、逃げ癖、忍耐力不足。読むほどに当たっている気がして、しかし何をすればいいのかは分からないまま閉じることになる。

研究の側は、この問題を100年ほど調べ続けている。性格も測ってはいるのだが、蓄積の中心にあるのは「誰が、どんな条件のときに辞めたか」のほうだ。

まず、どれくらいの人が辞めているのか

厚生労働省は毎年、新規学卒就職者の離職状況を公表している。令和7年10月24日に出た最新の集計(令和4年3月卒業者が対象)では、就職後3年以内の離職率は新規大卒就職者で33.8%、新規高卒就職者で37.9%だった。前年度からは大卒で1.1ポイント、高卒で0.5ポイント下がっている。

ここで注目したいのは平均値そのものより、同じ資料に載っている事業所規模別の内訳のほうだ。大卒の3年以内離職率は、従業員5人未満の事業所で57.5%、1,000人以上の事業所で27.0%。倍以上の開きがある。産業別で見ると、大卒では宿泊業・飲食サービス業が55.4%、生活関連サービス業・娯楽業が54.7%で、「その他」を除く上位5産業の一位と二位だった。

同じ「3年以内に辞めた」でも、どこに入ったかで割合が二倍以上ちがう。ただしこれは規模や業種そのものが原因だと示すデータではない。労働条件も教育体制も業種構成も混ざった、集計上の観察でしかない。それでも、離職率という数字が個人の資質だけで動いていないことは分かる。

厚労省データが示す、事業所規模別の3年以内離職率の開き

1,800の効果量を並べたとき、何が残ったか

離職研究の全体像を知るのに便利なのが、Rubenstein、Eberly、Lee、Mitchell の2018年のメタ分析だ(Personnel Psychology 71巻)。自発的離職の予測因子を57種類、効果量にして1,800件分統合している。2000年の Griffeth らの大規模メタ分析(45予測因子・843効果量)を約20年ぶりに更新した仕事にあたる。

数字を並べると、こうなる。職務満足と離職の相関はρ = −.28、組織コミットメントは−.29。仕事の特性は−.18、雇用の安定は−.23。ここまでは想像どおりだと思う。

意外だったのは、その周辺だ。

給料と離職の結びつきは、思ったより弱い

給与と離職の相関はρ = −.17。2000年の推定(−.11)より強くはなったが、それでも職務満足より弱い。著者ら自身、この効果が他の予測因子と比べて強くないことを説明しきれていないと書いている。

仕事量(−.10)やタスクの複雑さ(−.01)に至っては、ほとんど離職と結びついていなかった。ただしこれはゼロ次の相関であって、忙しさが無関係だと示すものではない。著者らも、仕事量の多さが問題になるのは家庭など他の役割にも時間を割いている人に限られるかもしれない、と交互作用の検討を今後の課題に挙げている。

いちばん強かったのは「仕事の外」を含む満足だった

このメタ分析で新しく統合された変数のなかに、他者満足(other satisfaction)という括りがある。キャリア満足や人生満足といった、目の前の職務から少し離れたところにある満足度だ。これと離職の相関がρ = −.43で、統合された変数のなかでも強い部類に入った。キャリアコミットメントなどを含む他者コミットメントも−.34だった。ただし著者らは、これらが比較的少ない研究にもとづく推定であることを明記している。

そのうえで著者らは、離職は目の前の職場環境への反応として理論化されがちだが、この相関はもっと遠い、人生全体の不満が関わっている可能性を示すと述べている。仕事を辞める決断が、仕事の中だけで完結していないということだ。

もうひとつ。ストレスへの対処能力(コーピング)が−.39と高かった。ただしこの値については、著者ら自身が研究数の少なさゆえの外れ値だとして、確かな結論を出すにはさらに実証研究が必要だと注意を促している。数字だけを持ち出すのは危うい。性格特性のほうは、誠実性が−.16、情緒安定性が−.19。あるにはあるが、決定的というほどの大きさではない。

正直、私はこの順番を見たときに少しほっとした。性格の欄より、満足と対処と環境の欄のほうが大きい。前者は変えづらいが、後者は動かせる余地がある。

「続かない自分」ではなく「合っていない組み合わせ」

もう一本、Kristof-Brown、Zimmerman、Johnson の2005年のメタ分析を挙げたい(Personnel Psychology 58巻)。172の研究、836の効果量を統合し、人と環境の適合(フィット)が何と結びつくかを整理したものだ。

離職意図との相関は、人と職務の適合(PJフィット)で−.46、人と組織の適合(POフィット)で−.35、人と集団の適合(PGフィット)で−.22。職務満足はPJフィットと.56の相関だった。

「合っていない」という感覚は、気のせいでも甘えでもなく、離職意図と強く結びついた変数のひとつとして測られている。

ただし、ここは正確に書いておきたい。いま挙げたのはすべて「離職意図」との相関だ。同じメタ分析は実際の離職行動との相関も報告していて、そちらはPJフィットで−.08、POフィットで−.14しかない。Rubenstein らは13年後にこの数値を更新し、より強い−.29という推定を出しているが、それでも意図との相関ほどの大きさではない。

つまり「合わない」という感覚は、辞めたい気持ちをかなりよく説明する一方で、実際に辞めるかどうかまでは同じ強さでは説明しない。辞めるという行動には、次の当てや生活の事情といった別の要因が挟まる。Rubenstein らも、辞めようという考えと実際の離職の相関はρ = .56で、両者は同一ではなく同一に扱うべきでもないと明言している。

能力が足りているか、より、欲しいものが供給されているか

このメタ分析でいちばん面白いのは、PJフィットを二つに分けた分析だ。

ひとつは需要-能力適合(demands-abilities fit)。仕事が要求する知識・技能に、自分の能力が届いているかという意味の「合う」。もうひとつは欲求-供給適合(needs-supplies fit)。自分が仕事に求めているものを、その仕事が供給してくれているかという意味の「合う」。

離職意図との相関は、需要-能力適合が−.23、欲求-供給適合が−.50だった。職務満足との相関も、それぞれ.41と.61で差がついている。

ここから先は私の受け取り方になるが、この差はけっこう重い。仕事が続かないとき、私たちはたいてい「能力が足りないからだ」のほうを疑う。でもデータの上では、離職意図とより強く結びついていたのは「求めているものが返ってこない」ほうだった。静かに働きたいのに常時オープンなフロアにいる、深く考えたいのに即答を求められる、といった噛み合わなさは、能力不足とは別の軸の話になる。

その軸の当たりをつける方法は、内向型の適職の見つけ方キャリアアンカーの8分類は、どこまで裏付けがあるのかでも扱った。実際に次を探す段階に入っているなら、内向型の転職サイト・エージェント完全ガイドのほうが実務的だと思う。

それでも、辞め方は選べる

適合の話は救いになる一方で、雑に使うと危うい。「合わないから辞める」を繰り返せば、次の職場でも同じ噛み合わなさに当たる確率は下がらない。

さきほどの「意図と行動は別」という話は、ここでは味方になる。著者らはその差を「ずれ(slippage)」と呼んでいた。考えることと、そうすることのあいだには隙間がある。その隙間が、条件を見直す時間になる。

私が次を探すときに手元に置いているのは、条件の一覧ではなく一枚の問いだ。前の職場で、いちばん消耗したのは業務内容だったか、人だったか、それとも場そのものの刺激量だったか。この三つは求人票の同じ欄には書かれていないので、自分で分けておくしかない。刺激量については最適覚醒水準、消耗の個人差については外向性-内向性の項目もあわせてどうぞ。

体のほうが先に音を上げているとき

ここまでは「合う・合わない」の話だった。ただ、朝どうしても起き上がれない、食欲や睡眠が明らかに変わった、休日も回復しない——こうした状態が二週間以上続いているなら、それは適合の問題として扱う段階を越えている可能性がある。

厚生労働省のこころの耳には、働く人向けの相談窓口と、産業医・医療機関へのつなぎ方がまとまっている。転職の判断より先に、そちらを使ってほしい。判断の質は、体調に引きずられる。

よくある質問(FAQ)

転職回数が多いと、やはり不利になりますか

離職の研究は「その後どう評価されるか」ではなく「誰がなぜ辞めたか」を測っているので、採用側の評価については別のデータが必要になります。ただRubenstein らのメタ分析では、勤続年数と離職の相関が−.27、年齢が−.21で、若いほど・在籍が短いほど辞めやすい傾向が確認されています。2000年の推定(年齢−.11)より効果が強まっている点も報告されています。

我慢して続けたほうがいいのか、辞めたほうがいいのか、どちらですか

研究はどちらが良いかを決めていません。測られているのは、どんな条件のときに人が辞めるか、そしてどの変数が離職意図と強く結びつくかだけです。判断材料としては、欲求-供給適合(求めているものが返ってきているか)が離職意図と−.50で結びついていた事実が使えると思います。今の職場で返ってこないものが、次の職場では返ってくる見込みがあるのか。そこを具体的に書き出せるかどうかが分かれ目です。

性格的に飽きっぽいから続かない、ということはありますか

性格特性は離職と関連していますが、その大きさは限定的です。Rubenstein らのメタ分析で誠実性は−.16、情緒安定性は−.19。一方で職務満足は−.28、キャリア満足や人生満足を含む他者満足は−.43でした(後者は比較的少ない研究にもとづく推定だと著者らは断っています)。性格より、満足や適合の変数のほうが大きく出ています。相関は集団の傾向であって、個人の予言ではありません。

小さい会社ばかり選んでいるのがまずいのでしょうか

厚労省の集計(令和4年3月卒業者)では、大卒の3年以内離職率は5人未満の事業所で57.5%、1,000人以上で27.0%でした。規模による差は実際に大きいです。ただしこれは規模そのものが原因だと示すデータではなく、業種構成・労働条件・教育体制など多くの要因が混ざった観察結果です。小規模だから辞めるのではなく、小規模の職場に多く含まれる条件が効いている可能性があります。

一つの職場で長く働けている人は、何が違うのですか

Rubenstein らのメタ分析で離職と最も強く結びついていたのは、離職意図そのもの(.56)と求職活動(.40)でした。つまり「辞めようと考えている/実際に探している」が最良の予測子で、これはやや当たり前の結果です。態度や環境の側で目立ったのは、職務満足(−.28)、組織コミットメント(−.29)、職場への埋め込み(job embeddedness、−.26)あたりでした。埋め込みとは、その職場や地域にどれだけ根を張っているか——人間関係、生活の都合、辞めたときに失うものの大きさを指す概念です。長く働けている人が特別に忍耐強いというより、辞めにくくする条件が積み上がっている、という読み方のほうがデータには近いと思います。